在宅での介護が始まると、慣れないことの連続です。
介護が必要な方のお食事のかたさやとろみはどのように決めて、作っているでしょうか?
介護食を作っていて、不安になることはありませんか?
管理栄養士でも対象者のお食事のレベルや種類を決めるときは慎重に行います。
今回は、介護食を作り始めたばかりの初心者でも、高齢者のお食事(介護食)の種類や選び方がわかるようにフローチャートを用いて、わかりやすく解説します。
介護食とは?
実は、介護食とは「こういうもの!」という定義は実はありません。
噛む(咀嚼)飲み込む(嚥下)機能が落ちてきた高齢者が食べやすいように作られたお食事全般のことを意味しています。
あたりまえのことですが、一口に「高齢者」といっても、噛む(咀嚼)・飲み込む(嚥下)の機能は一人一人違います。
そのため介護食の種類もさまざまです。
まずは介護食の種類を知るところから始めましょう。
介護食の種類
大まかに分けるときざみ食・軟菜食・ミキサー食・ソフト食・嚥下食などが挙げられます。
噛む(咀嚼)や飲み込む(嚥下)機能の状態にあわせて、それぞれにふさわしい食事の形態を選ぶことが大切です。
逆に、状態に合わない形態の食事を食べてしまうと、”誤嚥”と言われる食べ物や異物を気管内に飲み込んでしまうことや“むせる”などのトラブルを招いてしまうことがあります。
▼こちらの記事で「高齢者の【誤嚥】の怖さと予防法」をご紹介しています▼
「誤嚥」は死にも繋がるリスク!!
『誤嚥』などのトラブルを予防するためには、それぞれの食事の特徴を知り、介護食を食べる方の咀嚼・嚥下機能の状態と照らし合わせて選んでいくことが大切です。
きざみ食
【特徴】
一般的なお食事を細かく刻んだ状態のもの。
『飲み込む(嚥下)力』には問題がないけれど『噛む(咀嚼)力』が弱くなった方に。
point!
家族が食べる食事を細かく刻む程度で良いので比較的作りやすい。
単純にきざむだけでは、口の中でばらけてまとまりにくく、誤嚥につながる場合もある。
とろみ剤を一緒に使用しなければ、食べにくいので意外と取り扱いは難しい。
現在も、医療施設等で「きざみ食」を提供しているところもありますが、「誤嚥」のリスク軽減・見た目の改善等のために「ソフト食」に移行していく流れが出来てきています。
軟菜食
【特徴】
食材を煮たり茹でたりして、舌で潰したり歯ぐきで噛んだりできる柔らかさにしたもの。
柔らかいので噛みやすい。バラバラにきざまれていないので、飲み込みはしやすい。
『飲み込む(嚥下)力』には問題がないけれど『噛む(咀嚼)力』が弱くなった方に。
point!
食材そのものの形態で食べることができるので、見た目が良い。
調理時間と手間を考えると作る側の負担が大きい。
▼こちらの記事で「高齢者向け宅配食【やわらかダイニング】を1週間食べた体験談」をご紹介しています▼
“軟菜食”メニューを写真付きで掲載しているので参考にしてみてください。
ミキサー食
【特徴】
食材を調理後、ミキサーにかけてペースト状にしたもの。
『噛む(咀嚼)力』が非常に弱くなった方に。
あまりさらさらした液状だとむせや誤嚥を招くこともあるため、食材によってはとろみ剤を使用する。
point!
ミキサーにかけるだけで良いので調理しやすい。
見た目や食感がどれも同じようになりがち。
調理者の盛り付け方など工夫が必要になる。
食材や液体のさらさら具合によってもとろみ剤の粘度も異なるので取り扱いは意外と難しい。
ミキサーを使用するときに、食事に水分を加えてミキシングするため水分量も多く量が全体量が多くなる。
ソフト食
【特徴】
ミキサー食状態のものを固めて元の形状に仕立てたもの
『飲み込む(嚥下)力』・『噛む(咀嚼)力』どちらも弱くなった方に。
point!
調理後にミキサーでペースト状にして再形成したものです。
在宅で作ろうとすると、調理時間・手間がかかるため作る側の負担が大きい。
ソフト食と言っても、硬さ(弾力)がいろいろあるので食べる人に合わせたかたさを見極める必要がある。
▼こちらの記事で「高齢者向け宅配食【ムースやわらか食】の実食レビュー」をご紹介しています▼
“ソフト食”メニューを写真付きで掲載しているので参考にしてみてください。
嚥下食
【特徴】
調理したものをミキサー等でペースト状にしてとろみをつけるか、ゼリー状にして飲み込みやすくしたもの。きざみ食・ミキサー食にとろみがついた状態もしくはソフト食を総称して『嚥下食』と呼ぶことが多い。
『飲み込む(嚥下)力』・『噛む(咀嚼)力』どちらも弱くなった方に。
介護食選びのポイント
高齢者の方の嚥下機能の状態は日々変化していきます。
一人一人の状態よって選ぶ食事は異なります。
どんな食事が良いのか不安な場合は農水省が「スマイルケア食」という名称で取り組んでいるものを参考にされるのもお勧めです。
「スマイルケア食」では、これまで多種多様だった市販の介護食を色分けしてわかりやすく表示することを整えたものです。
・健康維持上栄養補給が必要な人向けの食品に「青」マーク
・噛むことが難しい人向けの食品に「黄」マーク
・飲み込むことが難しい人向けの食品に「赤」マーク
を表示し、それぞれの方の状態に応じたて市販の介護食品を選びやすくしてくれています。
スマイルケア食品では、以下のような食べる悩みに応じたフローチャートとともに分かりやすく介護食を選べる体制を整えています。
フローチャートに沿って一番適したお食事内容を知り、その表示の市販品を試食してみることで参考にしてみるのも良いでしょう。 出典:農林水産省
その他にも日本介護食品協議会が制定している『ユニバーサルデザインフード』と呼ばれる表示があります。この表示は、かむ力や飲み込む力が弱くなった人のために食べやすさに配慮した加工食品に「かたさ」や「粘度」に応じて4段階に区分した商品表示がされています。
こちらにも適切な食事を選ぶためのフローチャートがあるのでぜひ、利用してみてください。
フローチャートはコチラをクリック。
自分で判断するのに不安がある場合は、
かかり付けの医師や、保健所の管理栄養士に相談してみても良いと思います。
保健所の場合は、事前予約が必要な場合もあります。
各市町村のホームページ等に相談窓口の電話番号が掲載されているのでそちらから連絡してみましょう。
まとめ
「介護食」といってもさまざまな種類があります。
介護食をつくることになったら…
まずは、『飲み込む(嚥下)力・噛む(咀嚼)力』の状態を見ながらきざみ食・軟菜食・ミキサー食・ソフト食・嚥下食など、その方の状態にあった適切な食事を選びましょう。
選び方に迷ったら、『スマイルケア食』か『ユニバーサルデザインフード』のフローチャートを参考にしてみましょう。
▼”やわらかダイニング“は食事について管理栄養士に気軽に相談できます▼
介護食のお弁当選びに不安がある方にもおすすめ。