高齢者の便秘の原因とは?管理栄養士が食事・水分・運動など改善のポイントを解説
はじめに
「最近、便秘が続いていてつらい」
「便秘薬を飲んでいるけれど、なかなかスッキリしない」
「食事で便秘を改善する方法はあるの?」
高齢になると、このような便秘の悩みを抱える方は少なくありません。
私はデイサービスで管理栄養士として高齢者の栄養相談に携わっていますが、便秘薬を服用している方は本当に多いと感じています。
一方で、お話を伺うと、
- 水分があまり飲めていない
- 食事量が少なくなっている
- 運動量が減っている
など、毎日の生活習慣が便秘に大きく関係しているケースも少なくありません。
この記事では、高齢者に便秘が起こりやすい理由と、毎日の食事や生活でできる改善・予防のポイントを管理栄養士の視点からわかりやすく解説します。
高齢者はなぜ便秘になりやすいの?
便秘は単に「何日も便が出ないこと」だけではありません。
便が出ても、
- 出し切れない感じがする
- お腹が張って苦しい
- 便が硬くて出しづらい
など、排便に不快感がある状態も便秘に含まれます。
高齢者では、年齢とともに身体の機能が変化するため、便秘になりやすい原因がいくつも重なります。
主な原因は次のとおりです。
- 腸のぜん動運動が弱くなる
- 腹筋や排便時にいきむ力が低下する
- 水分摂取量が少なくなる
- 食事量が減って便の量が少なくなる
- 運動量が減る
- 服用している薬の影響
こうした要因が重なることで、便が腸の中に長くとどまり、水分が吸収されて硬くなり、さらに排便しづらくなるという悪循環が起こります。
デイサービスで感じる、高齢者の便秘で多い3つのこと
① 水分不足の方がとても多い
私がデイサービスで特に感じるのは、水分不足の方がとても多いことです。
「トイレが近くなるから、あまり飲みたくない」
「のどが渇かないから飲まない」
という理由で、水分摂取量が不足している方をよく見かけます。
便には多くの水分が含まれています。
水分が不足すると便が硬くなり、さらに排便しづらくなってしまいます。
高齢になると、のどの渇きを感じにくくなる方も少なくありません。「喉が渇いてから飲む」ではなく、時間を決めて少しずつ飲むことがおすすめです。
② 「毎日出ない=便秘」と思っている方が多い
「毎日便が出ないと便秘ですよね?」
デイサービスでも、このような質問を受けることがあります。
もちろん毎日排便があることは理想ですが、実際には排便回数だけで便秘かどうかを判断することはできません。
高齢になると、若い頃より食事量が少なくなる方が増えます。
食べる量が減れば、作られる便の量も自然と少なくなります。
そのため、
- 数日に1回でもスムーズに出ている
- お腹が張らない
- 残便感がない
という状態であれば、大きな問題がないこともあります。
一方で、
- 強くいきまないと出ない
- お腹が張って苦しい
- 残便感がある
という場合は、便秘への対策が必要です。
③ 便秘薬を飲んでいる方が多い
デイサービスを利用されている方の中には、便秘薬を毎日服用している方も少なくありません。
便秘薬は必要に応じて使用することが大切ですが、それだけでは根本的な改善につながらない場合もあります。
毎日の食事や水分、運動などの生活習慣を見直すことで、便秘薬に頼りすぎずに過ごせるようになる方もいます。
もちろん、自己判断で便秘薬を中止することは避け、医師や薬剤師に相談しながら調整することが大切です。
まず見直したい!便秘改善のための食生活
便秘を改善するためには、「食物繊維をたくさん食べればよい」というわけではありません。
私が高齢者の栄養相談でまず確認するのは、
- 食事量
- 水分量
- 食事内容
の3つです。
まずは十分な食事量を確保し、そのうえで食物繊維や水分を意識することが、便秘改善への第一歩になります。
① 食事量をしっかり確保する
便秘対策というと、「食物繊維を増やそう」と考える方が多いですが、その前に大切なのが十分な食事量を確保することです。
食べる量が少ないと、便の材料そのものが不足してしまいます。
その結果、便の量が少なくなり、腸への刺激も減るため、排便しにくくなってしまいます。
高齢になると食欲が低下したり、一度にたくさん食べられなくなったりする方も少なくありません。
まずは1日3食を基本に、無理のない範囲で食事量を確保することを意識しましょう。
② 水分をこまめに補給する
便には多くの水分が含まれています。
体の水分が不足すると、便から水分が吸収されて硬くなり、排便しにくくなってしまいます。
高齢者は喉の渇きを感じにくくなるため、自分では十分飲んでいるつもりでも、水分不足になっていることがあります。
一度にたくさん飲むのではなく、
- 起床時
- 食事中
- おやつの時間
- 入浴後
- 就寝前
など、時間を決めて少しずつ飲む習慣をつけると続けやすくなります。
③ 食物繊維は「量」より「バランス」が大切
便秘対策には食物繊維が大切ですが、「たくさん食べればよい」というわけではありません。
食物繊維には
- 水溶性食物繊維
- 不溶性食物繊維
の2種類があります。
水溶性食物繊維は便をやわらかくし、腸内環境を整える働きがあります。
一方、不溶性食物繊維は便のかさを増やし、腸を刺激して排便を促します。
ただし、便秘がひどい方が不溶性食物繊維ばかりを摂ると、かえって便が硬くなり、出しにくくなることもあります。
海藻類、果物、大麦など水溶性食物繊維を含む食品もバランスよく取り入れることが大切です。
④ 発酵食品で腸内環境を整える
ヨーグルトや納豆、みそ、ぬか漬けなどの発酵食品には、腸内環境を整える働きがあります。
腸内細菌のバランスが整うことで、便通の改善が期待できます。
毎日少しずつ続けることが大切なので、自分が無理なく続けられる食品を選びましょう。
⑤ 適度に体を動かす
運動不足も便秘の原因のひとつです。
ウォーキングや体操などで身体を動かすことで、腸の動きも活発になります。
長時間座ったまま過ごすことが多い方は、室内で立ち上がる回数を増やすだけでも効果が期待できます。
介護が必要な方でも、椅子に座ったまま行える体操や深呼吸など、無理のない範囲で身体を動かすことを意識しましょう。
こんな症状がある場合は早めに受診しましょう
便秘は生活習慣の改善で良くなることもありますが、次のような症状がある場合は医療機関を受診してください。
- 激しい腹痛がある
- 吐き気や嘔吐がある
- 血便が出る
- 急に便秘がひどくなった
- 体重減少が続いている
大腸の病気などが隠れている場合もあるため、「ただの便秘」と自己判断しないことが大切です。
便秘薬は悪いことではありません
デイサービスで管理栄養士として働いていると、便秘薬を服用されている方は本当に多いと感じます。
便秘薬を飲んでいるからといって、「薬に頼りすぎている」と心配する必要はありません。
便秘の原因は人それぞれで、加齢による腸の動きの低下や病気、服用している薬の影響などが関係していることもあります。
そのため、医師の指示で便秘薬を使用することは決して珍しいことではありません。
管理栄養士が伝えたいこと
デイサービスで高齢者の皆さんと接していると、便秘に悩んでいる方は本当に多いと感じます。
一方で、お話を伺うと
- 食事量が少ない
- 水分が不足している
- あまり身体を動かしていない
という方も少なくありません。
便秘薬は必要な治療のひとつですが、それだけでは改善が難しい場合もあります。
毎日の食事や水分補給、生活習慣を少し見直すだけでも、便の状態が変わることがあります。
無理なく続けられることから、一つずつ取り入れてみてください。
まとめ
高齢者の便秘は、加齢だけでなく、食事量の低下や水分不足、運動不足など、さまざまな要因が重なって起こります。
便秘薬だけに頼るのではなく、
- 十分な食事量を確保する
- 水分をこまめに補給する
- 食物繊維をバランスよく摂る
- 発酵食品を取り入れる
- 適度に身体を動かす
といった生活習慣を見直すことも大切です。
「毎日排便があるか」だけではなく、「気持ちよく排便できているか」を目安に、ご自身に合った便秘対策を続けていきましょう。


