お正月が近づくと、毎年のように耳にするのが「お餅による窒息事故」のニュースです。

「うちの親はまだ元気だから大丈夫」

そう思っていても、年齢とともに噛む力や飲み込む力は少しずつ低下しています。

実際に、お餅による窒息事故の多くは65歳以上の高齢者に集中しています。

とはいえ、お正月くらいは家族と一緒にお雑煮やお汁粉を楽しみたいという気持ちもありますよね。

この記事では、管理栄養士の視点から、

  • 高齢者がお餅を食べると危険な理由
  • 誤嚥や窒息を防ぐためのポイント
  • 高齢者向けのやわらかいお餅
  • 病院で実際に提供していたお餅風レシピ

をご紹介します。

無理に我慢するのではなく、できるだけ安全にお正月を楽しむための参考にしてください。

高齢者がお餅で窒息しやすい理由

お餅は高齢者にとって特に注意が必要な食材です。

理由は、お餅特有の

  • 強い粘り
  • 歯にくっつく性質
  • 飲み込みにくさ

があるためです。

若い頃は問題なく食べられていた方でも、年齢を重ねると身体は少しずつ変化しています。

例えば、

  • 噛む力が弱くなる
  • 唾液の量が減る
  • 飲み込む力が低下する
  • 咳反射が弱くなる

といった変化です。

その結果、お餅が喉につまりやすくなります。

実際に窒息事故は毎年発生しており、その多くが高齢者です。

お餅は「好きだから」「毎年食べているから」だけで安全とは言えない食材であることを知っておきましょう。

「うちの親は大丈夫」は意外と危険

介護の相談を受けていると、

「まだ普通食が食べられるから大丈夫」

という声をよく聞きます。

しかし、お餅による事故は、寝たきりの方だけに起きるわけではありません。

普段は問題なく食事をしている方でも、

  • 風邪気味だった
  • 疲れていた
  • 急いで食べていた
  • 会話しながら食べていた

そんなちょっとしたきっかけで事故につながることがあります。

また、お正月は久しぶりに家族が集まり、会話が弾む時期です。

楽しい雰囲気の中で食べるからこそ、注意が必要です。

高齢者がお餅を食べるときの注意点

どうしてもお餅を食べたい場合は、できるだけリスクを減らす工夫をしましょう。

小さく切るだけでは不十分

よく「小さく切れば安心」と言われますが、それだけでは十分ではありません。

小さくなったお餅でも、口の中でまとまって再び大きな塊になることがあります。

小さく切ることに加えて、しっかり噛んでから飲み込むことが大切です。

お茶や汁物で流し込まない

お餅が飲み込みにくいからといって、お茶や汁物で流し込むのは危険です。

十分に噛めていない状態で飲み込んでしまうため、かえって誤嚥のリスクが高まります。

口の中のお餅がなくなってから、飲み物を飲むようにしましょう。

一人では食べない

高齢者がお餅を食べるときは、できるだけ家族がそばにいる状況が安心です。

万が一の際、すぐに対応できる環境を作っておくことも大切な誤嚥予防のひとつです。

最初の一口は特に注意

朝食や食事の最初の一口は、口や喉の動きがまだ十分に活発になっていません。

食事の前に少し会話をしたり、温かいスープを飲んだりして、口や喉を準備してから食べ始めると安心です。

市販のお餅が不安な場合は無理をしない選択も

ここまで読んで、

「やっぱり少し心配だな…」

と感じた方もいるかもしれません。

そんな場合は、無理に市販のお餅を食べる必要はありません。

最近は介護食向けに開発された、やわらかく食べやすいお餅や、お餅風の食品も販売されています。

お正月らしさを楽しみながら、リスクを減らせる選択肢も増えてきています。

高齢者向けのやわらかいお餅おすすめ2選

市販のお餅をそのまま食べるのが心配な方は、介護食向けに開発された「やわらかいお餅」を利用するのもおすすめです。

通常のお餅に比べて、

  • 歯切れがよい
  • べたつきが少ない
  • 飲み込みやすい

よう工夫されています。

ふくなお ミニさっくりお餅

介護食メーカー「ふくなお」が販売している、お餅の風味を残しながらも食べやすさに配慮された商品です。

国産もち粉を使用し、歯ぐきでもつぶせるやわらかさに仕上げられています。

お雑煮やお汁粉などにも使いやすく、お正月気分を楽しみたい方におすすめです。

キッセイ やわらか福もち

従来のお餅よりも粘りやべたつきを抑えた商品です。

煮るだけでなく、焼く・ゆでるなどさまざまな調理方法に対応しているため、普段のお餅と同じ感覚で使いやすいのが特徴です。

「少しでも安全にお餅を楽しみたい」という方は検討してみてもよいでしょう。

病院で実際に提供していた「お餅風レシピ」

病院勤務時代、嚥下機能が低下している患者さん向けに提供していたのが、お粥と白玉粉を使った「お餅風ゼリー」です。

見た目や風味はお餅に近いですが、粘りが少なく飲み込みやすいため、お正月行事食として喜ばれていました。

お餅風ゼリーの材料(2人分)

出典:フードケア公式ホームページ

 

  • 白玉粉 40g
  • ご飯 90g
  • スベラカーゼ 8g
  • お湯 270g

作り方

  1. 白玉粉、スベラカーゼ、お湯をミキサーに入れる
  2. 約30秒撹拌する
  3. ご飯を加える
  4. さらに1分以上ミキサーにかける
  5. 鍋に移し、中心温度80℃以上になるまで加熱する
  6. 型に流し入れて冷蔵庫で冷やし固める

完成後は、

  • お汁粉風
  • お雑煮風
  • きな粉餅風

などさまざまなアレンジが楽しめます。

白玉粉を使っているため、お餅らしい風味もしっかり感じられます。

ただし、嚥下状態には個人差があります。

不安がある場合は、かかりつけ医や言語聴覚士など専門職へ相談してください。

 

お餅が食べられなくてもお正月は楽しめる

「お餅が危ないなら、お正月らしいものは何も食べられない」

そんなふうに感じる方もいるかもしれません。

ですが本当に大切なのは、お餅そのものではなく、

「家族と一緒にお正月を楽しむこと」

ではないでしょうか。

やわらかい介護食向けのお餅や、お餅風レシピを活用すれば、無理をせず季節の行事を楽しむことができます。

命の危険を冒してまで市販のお餅を食べる必要はありません。

大切な人が安全に食べられる方法を選ぶことが、何より大切です。

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まとめ

高齢者のお餅による窒息事故は、毎年のように発生しています。

普段元気な方でも、年齢とともに噛む力や飲み込む力は少しずつ低下しているため、「うちは大丈夫」とは言い切れません。

まずは市販のお餅を無理に食べないこと。

そのうえで、

  • やわらかい介護食向けのお餅を選ぶ
  • お餅風レシピを活用する
  • 家族が見守りながら食べる

といった工夫を取り入れることで、より安全にお正月を楽しむことができます。

大切な家族と安心して新年を迎えるために、ぜひ参考にしてみてください。