はじめに

「認知症を予防する食べ物はありますか?」

管理栄養士として、この質問を受けることがあります。

残念ながら、「これを食べれば認知症を予防できる」という特別な食品はありません。

しかし、毎日の食事を整えることは、脳や体の健康を維持し、認知症のリスクを減らすために大切だと考えられています。

今回は、管理栄養士の視点から、認知症予防のために今日から実践できる食事のポイントを5つご紹介します。

ご自身やご家族の健康づくりに、ぜひ参考にしてください。

管理栄養士
管理栄養士
「これだけ食べれば大丈夫」という食品はありません。毎日の食事を少しずつ整えることが、脳の健康を守る第一歩になります。

認知症は食事だけで予防できる?

残念ながら、現在の医学では「認知症を完全に予防できる食事」は明らかになっていません。

しかし近年の研究では、生活習慣の改善によって認知症の発症リスクを減らせる可能性があることがわかってきています。

特に、食事・運動・睡眠・社会とのつながりなどは、脳の健康を維持するうえで重要な生活習慣と考えられています。

その中でも食事は毎日続けられる予防習慣の一つです。

栄養バランスの良い食事を続けることで、生活習慣病の予防や低栄養の改善につながり、結果として脳の健康維持にも役立つと考えられています。

管理栄養士
管理栄養士
認知症は「脳の病気」ですが、脳も私たちが食べた栄養で働いています。毎日の積み重ねがとても大切ですね。

管理栄養士が伝えたい認知症予防のための5つの食事ポイント

認知症予防のために特別な食材を用意する必要はありません。

まずは毎日の食事を見直すことから始めましょう。

ここでは、管理栄養士として特に意識していただきたい5つのポイントをご紹介します。

① バランスの良い食事を心がける

認知症予防だけでなく、健康づくりの基本は「バランスの良い食事」です。

ご飯やパンなどの主食だけで済ませたり、麺類だけ、丼物だけといった食事が続くと、必要な栄養素が不足しやすくなります。

理想は、

・主食(ご飯・パン・麺類)
・主菜(肉・魚・卵・大豆製品)
・副菜(野菜・きのこ・海藻類)

をそろえた食事です。

さらに果物や乳製品も取り入れることで、ビタミンやミネラル、カルシウムなども補いやすくなります。

毎食完璧を目指す必要はありません。

一日を通して栄養バランスが整っていれば十分です。

管理栄養士
管理栄養士
「何を食べたらいいですか?」と聞かれることがありますが、まずは主食・主菜・副菜をそろえることが何より大切です。特別な食品より、毎日の食事の積み重ねが健康につながります。

② たんぱく質をしっかり摂る

高齢になると食が細くなり、肉や魚を食べる量が少なくなる方が増えてきます。

すると筋肉だけでなく、体全体の栄養状態が低下し、「低栄養」と呼ばれる状態になることがあります。

低栄養は、体力や免疫力の低下だけでなく、認知機能の低下にも関係すると考えられています。

毎食、肉・魚・卵・豆腐・納豆など、たんぱく質を含む食品を取り入れることを意識しましょう。

食欲がない日は、ヨーグルト牛乳、チーズなど乳製品もおすすめです。

管理栄養士
管理栄養士
私は介護現場で、食事量が減ったことで低栄養になり、元気がなくなってしまう高齢者を多く見てきました。年齢を重ねるほど、「しっかり食べること」がとても大切になります。

③ DHA・EPAを含む青魚を積極的に食べる

認知症予防に関連する栄養素として、特に注目されているのが「DHA」「EPA」です。

DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、青魚に多く含まれるオメガ3系脂肪酸で、脳や神経細胞を構成する重要な成分です。

近年の研究では、魚をよく食べる人は認知機能の低下リスクが低い可能性があることが報告されています。

特定の食品だけで認知症を予防できるわけではありませんが、魚を積極的に取り入れることは、脳だけでなく心臓や血管の健康維持にも役立ちます。

おすすめの魚は次のような青魚です。

・サバ
・イワシ
・アジ
・サンマ
・ブリ

 

缶詰でも栄養価は十分に期待できますので、忙しい日はサバ缶イワシ缶を活用するのもおすすめです。

管理栄養士
管理栄養士
毎日魚を食べるのは難しくても大丈夫です。まずは「週に2~3回魚料理を取り入れる」ことから始めてみましょう。缶詰も立派な魚料理ですよ。

④ 野菜や果物で抗酸化成分を補う

年齢を重ねると、体の中では「酸化」が進みやすくなります。

酸化とは、細胞がダメージを受ける現象のことで、老化や生活習慣病とも深く関わっています。

野菜や果物に含まれるビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化成分は、体内の酸化ストレスを抑える働きが期待されています。

特におすすめしたい食品は、

・緑黄色野菜(ブロッコリー・ほうれん草・にんじんなど)
・トマト
・きのこ類
・ブルーベリー
・柑橘類
・緑茶

などです。

さまざまな色の野菜や果物を取り入れることで、幅広い栄養素を摂取できます。

管理栄養士
管理栄養士
「一日350g以上の野菜」が目標です。毎食、小鉢1~2品を意識するだけでも続けやすくなりますよ。

⑤ 減塩と低栄養を防ぐ

認知症の中でも「脳血管性認知症」は、高血圧や脳梗塞などと深く関係しています。

そのため、高血圧を予防するための減塩も大切なポイントです。

塩分の摂り過ぎを防ぐためには、

・だしや香辛料を活用する
・汁物は汁を飲み干さない
・加工食品を食べ過ぎない

などの工夫がおすすめです。

一方で、高齢者は「減塩ばかり」を意識しすぎて食事量そのものが減ってしまうケースもあります。

認知症予防では、減塩だけでなく、しっかり食べて低栄養を防ぐことも同じくらい重要です。

体重が減ってきた、食欲がないという場合は、早めにかかりつけ医や管理栄養士へ相談しましょう。

管理栄養士
管理栄養士
介護の現場では、「食べる量が減って元気がなくなった」という方を多く見てきました。高齢者は「食べ過ぎ」よりも「食べなさ過ぎ」に注意が必要な場合も少なくありません。

管理栄養士からひとこと

認知症予防というと、特別な食品や健康食品を思い浮かべる方も多いかもしれません。

しかし、私が介護の現場で感じてきたのは、「毎日の普通の食事」を続けることの大切さです。

毎日決まった時間に食事をし、肉・魚・卵・大豆製品などからたんぱく質を摂り、野菜もしっかり食べる。

そんな当たり前の積み重ねが、脳だけでなく全身の健康にもつながります。

完璧を目指す必要はありません。

できることから少しずつ続けていくことが、一番の近道です。

まとめ

認知症は誰にでも起こる可能性のある病気ですが、毎日の生活習慣を見直すことは、将来の健康につながります。

特定の食品だけで認知症を予防することはできませんが、バランスの良い食事や十分なたんぱく質、魚に含まれるDHA・EPA、野菜や果物を意識した食生活は、脳の健康を維持するうえで大切です。

また、高齢者では低栄養も認知機能の低下に関係すると考えられています。

「減塩」「しっかり食べること」の両方を意識しながら、無理なく続けられる食生活を目指しましょう。

毎日の食事は、未来の健康への投資です。

今日できることから、一歩ずつ始めてみてください。

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