コンロが使えなくなっても、料理はあきらめなくていい。高齢者が「作る楽しみ」を続ける方法
はじめに
高齢になった親に、そう伝えた経験はありませんか。
火の消し忘れや転倒、認知機能の変化などを考えると、家族として心配になるのは当然です。実際に、デイサービスでも「家族にコンロを使わないように言われている」という利用者さんは少なくありません。
安全を守るためには、とても大切な判断です。
しかし、その一方で、料理をやめてしまったことで食事を楽しむ機会や、「自分でできる」という自信を失ってしまう方もいます。
私はデイサービスで管理栄養士として働いていますが、料理教室の日になると、普段より利用者さんの表情がぐっと明るくなるのを何度も見てきました。
野菜を切る人、混ぜる人、盛り付ける人。
それぞれが役割を持ち、「今日は何を作るの?」「いい匂いがするね」と自然に会話が生まれます。
以前、一緒に料理をした利用者さんが、完成した料理を見ながらこんなことを話してくださいました。
その言葉を聞いたとき、料理はただ食事を作るためのものではないのだと改めて感じました。
誰かのために作ること。
「おいしい」と言ってもらえること。
それは、年齢を重ねても変わらない喜びであり、生きがいのひとつなのです。
だからこそ私は、安全のためにコンロを手放すことがあっても、「料理をする楽しみ」まであきらめる必要はないと思っています。
今回は、コンロが使えなくなった高齢者が、無理なく料理を続けるための工夫について、管理栄養士の視点からお伝えします。
コンロが使えなくなる高齢者は少なくありません
高齢になると、今まで当たり前にできていた料理が少しずつ難しくなることがあります。
例えば、
- 火を消したか不安になる
- 鍋を持ち上げるのが重たい
- 長時間立っているのがつらい
- 転倒が心配
- 家族から「コンロは危ないから使わないで」と言われた
このような理由から、コンロを使わなくなる方は珍しくありません。
特に一人暮らしの場合は、離れて暮らす家族にとって火の始末は大きな心配事です。
安全を優先してコンロを使わないという選択は、とても大切なことです。
ただ、ここで気を付けたいのは、「コンロを使わない」と「料理をしない」は同じではないということです。
料理をやめると、食事だけではなく生活も変わる
料理ができなくなると、
「お弁当を温めるだけ」
「パンだけで済ませる」
「毎日同じものを食べる」
という生活になりやすくなります。
もちろん、簡単に食事を済ませられることも大切ですが、それだけでは栄養が偏ったり、食欲が低下したりすることもあります。
しかし、私がもっと心配なのは、「料理をしなくなることで生活の楽しみまで減ってしまうこと」です。
献立を考える。
冷蔵庫を開ける。
食材を並べる。
できあがった料理をお皿に盛り付ける。
そして、「今日は上手にできた」と感じる。
料理には、このような小さな達成感がたくさん詰まっています。
年齢を重ねると、「してもらうこと」が少しずつ増えていきます。
だからこそ、「自分でできた」という経験は、とても大切なのです。
「できること」を残す工夫が、暮らしの自信につながる
コンロが使えなくなったからといって、料理をあきらめる必要はありません。
最近では、安全に配慮しながら料理を続けられる方法がたくさんあります。
例えば、
- 電子レンジだけで調理できるレシピを取り入れる
- カット済みの野菜を活用する
- 下ごしらえだけ家族が行い、最後の調理は自分で行う
- 火を使わない調理器を利用する
など、少し工夫するだけで「自分で料理をする楽しみ」を続けることができます。
料理のすべてを一人で行う必要はありません。
「最後に味付けをする」
「お皿に盛り付ける」
そんな小さな役割だけでも十分です。
年齢を重ねても、「自分でできた」という経験は、毎日の暮らしに自信を与えてくれます。
その方ができる部分を一緒に考えることが、長く続けるコツです。
火を使わない調理器という選択肢も
「電子レンジで温めるだけの食事では物足りない。」
そんな方には、火を使わずに調理できる調理器を取り入れる方法もあります。
最近では、電子レンジだけで焼き魚や肉料理などが作れる調理器も販売されています。
焼き目がつくことで見た目や香りも良くなり、「ちゃんと料理をした」という満足感につながります。
コンロを使わなくても、
- 焼き魚
- ハンバーグ
- 鶏肉料理
- 野菜炒め風のおかず
などが作れる商品もあり、安全と料理の楽しさを両立しやすくなっています。
もちろん、すべての人に必要というわけではありません。
大切なのは、その人の身体の状態や生活スタイルに合った方法を選ぶことです。
火を使わなくても料理の幅を広げられる調理器は、一つの選択肢になると思います。
宅配食やレトルトを上手に組み合わせるのもおすすめ
毎日料理をするのは大変という方もいるでしょう。
そんなときは、無理をせず宅配弁当やレトルト介護食を活用することもおすすめです。
例えば、
- 週に数日は宅配弁当
- 元気な日は自分で料理
- 疲れた日はレトルトを利用
というように組み合わせることで、無理なく食事を続けることができます。
「毎日手作りしなければならない。」
そう考える必要はありません。
大切なのは、長く続けられることです。
https://eiyousupport.com/2019/04/21/kaigosyokubenntourannkinngu/
管理栄養士として伝えたいこと
デイサービスで料理教室を行うたびに感じることがあります。
それは、料理が完成したときの利用者さんの笑顔です。
普段は「もうできないから」と遠慮される方も、
野菜を切ったり、
混ぜたり、
盛り付けたり、
それぞれが役割を持つことで、自然と笑顔になります。
以前、一緒に料理をした利用者さんが、
「娘が来るから、これ持って帰って食べさせてあげたい。」
と話してくださいました。
私は、その言葉が今でも忘れられません。
年齢を重ねても、
「誰かのために作りたい。」
「喜んでもらいたい。」
そんな気持ちは変わらないのです。
料理は、栄養を摂るためだけのものではありません。
料理には、
暮らしがあり、
役割があり、
生きがいがあります。
だから私は、安全のためにコンロを手放すことがあっても、
「料理をする喜び」まで手放す必要はないと思っています。
その人に合った方法を見つけながら、「できること」を少しでも続けていけたら、それが豊かな毎日につながるのではないでしょうか。
まとめ
高齢になると、安全のためにコンロを使わなくなる方は少なくありません。
しかし、「コンロを使わないこと」と「料理をあきらめること」は別の話です。
電子レンジや火を使わない調理器、宅配食などを上手に取り入れながら、その人らしい方法で料理を続けることは十分にできます。
料理は、食事を作るためだけではなく、「誰かのために作る喜び」や「自分でできた」という自信にもつながります。
安全に配慮しながら、「できること」を少しでも続けられる方法を、ご本人やご家族で一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
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